鉄塔
送電鉄塔の規模
電圧が高くなると建物や樹木等との距離を大きくとるため、鉄塔は大きくなります。
建物と樹木の離隔距離
送電鉄塔の種類
四角鉄塔(山形鉄塔)
山形鋼材で構成され、骨組みの外形が四角すいの形状となっている鉄塔。
四角鉄塔(鋼管鉄塔)
鋼管鋼材で構成され、骨組みの外形が四角すいの形状となっている鉄塔。
矩形鉄塔
骨組みの外形が上から見ると長方形(矩形)になっているもの。
門型鉄塔
骨組みが門型(四角形)に構成され、中空の構造を持つもの。道路、鉄道、水路上などに送電線を設置する際に用いられる。
烏帽子鉄塔
鉄塔の中部以上が拡大された形の鉄塔。超高圧送電線や雪の多い山岳地の1回線鉄塔に使用される。脚部は四角または矩形鉄塔である。
鋼管単柱
周囲の景観に配慮して建設された鉄塔。公園や住宅密集地等に用いられる。鉄塔敷地は狭く済むが、建設コストは高い。
鉄柱
66kV2回線以下の比較的規模の小さい設備に使用され、基礎は共通の1個であり、支線を設けて補強することもある。
鉄柱には三角鉄柱や四角鉄柱などがあるが、近年、設備は減らしつつある。
木柱
木柱送電線は、強度が弱いためほとんどが1回線(3相3線式)装柱である。供給信頼度は低いためコンクリート柱等への改修を行っている。
コンクリート柱
コンクリート柱は、木柱の代用として用いられている。形状は、木柱とほぼ同一である。
パンザーマスト柱
数本の鉄製の円筒をつなぎ合わせて柱にしたものである。解体すると全長を短くできる。山間部などで搬入できない場所に用いられる。
地中線ケーブル塔上分岐鉄塔
専用腕金分岐型
ケーブルヘッド(終端接続部)1回線分3相を同一腕金上に配置。専用腕金は、地上約5~20mの高さに配置。
各腕金分岐型
用地・環境面また充電部高さの制約からケーブルヘッド(終端接続部)1相を1腕金に設置。
ケーブルヘッドの設置高さは、電力線腕金の高さにより決定される。
がいし
がいしの種類
(出展:写真は日本がいしより)
懸垂がいしクレビス型
耐アーク性の良いアルミナ含有磁器を使用。引張強度が120kN以下のものはクレビス型を使用している。
懸垂がいしボールソケット型
耐アーク性の良いアルミナ含有磁器を使用。
引張強度が120kNを超える。120kN以上のがいしにはポールソケット型が使用されている。種類には、280、320、340㎜がある。
耐塩用懸垂がいし
がいしの表面や煤煙などが付着した場合、湿気が加わると絶縁が低下する。そのため、絶縁低下しないようがいしを増結するか、十分耐力を有するがいしを使用しなくてはならない。そのため、連結個数が短くて済み、内ひだが長く上記のがいしよりも1.3倍程度汚損特性を有する耐塩用がいしを使用している。種類には、250、320、400㎜がある。
長幹がいし・長幹支持がいし
長幹がいしは、短径間箇所や変電所の引込等の使用張力が低い箇所に使用する場合が多い。なお、長幹がいしの塩分急速汚損量は、懸垂がいしに比べ102倍程度大きいデータがあり、重汚損地区(E地区異常)では、使用しないことが多い。長幹支持がいしは、ジャンパの支持装置として使用している。
がいしの色相
懸垂がいしの色は、「ライトグレー」を原則とするが、154kV以上の送電線路では連結個数が10個を超える場合は、区分色として、アース側から10個目ごとに茶色を使用する。また、環境に配慮が必要と判断された場合などにおいて、行政団体から要請があった場合は、環境融和のために基準色を茶色のがいしを使用する。
がいしの連結個数が容易にわかるようにアース側(鉄塔腕金側)から5個ないし10個ごとに茶がいしを使用している。 ※10個目・20個目・30個目
5個目に茶がいしを使用した例
ネイビーブルーのがいしを使用した例
国立公園内において、行政団体より要請があった場合
電線
電線の種類
◆裸電線・合成より線
鋼心アルミより線 [ACSR ]
比較的導電率の高い、硬アルミ線を使用しており、機械的強さは大きく、比重(重量)は小さく、長径間用にも適している。
アルミ覆鋼心アルミより線[ACSR/AC ]
アルミ覆鋼線で亜鉛めっきの数倍異常の厚さのアルミニウムを被覆したアルミ覆鋼線を用いているため、腐食されやすい場所に適している。
鋼心耐熱アルミ合金より線[TACSR ]
アルミ線の代わりに耐熱アルミ強引線を用いた電線。硬アルミ線(Haℓ)よりやや導電率が低いが、耐熱性が優れており許容電流が大きい。
アルミ覆鋼心耐熱アルミ合金より線 [TACSR/AC ]
防食性能は、ACSR/ACと同じ。導電率・耐熱性は、TACSRと同じ。
鋼心超耐熱アルミ合金より線[UTACSR]
構造は、ACSR系と同じ。TACSRよりも更に耐熱性が良い。
特殊電線
- 鋼心高力アルミ合金より線(KACSR)
- 鋼心高力耐熱アルミ俱金より線(KTACSR)
- 鋼心イ号アルミ合金より線[IACSR]高強度
- 特強鋼心[ACSR/EST,TACSR/EST 等]
- インバ心超アルミ合金より線[UTACIR]
- ルーズ電線[LACSR]
- ギャップ電線[GACSR]高強度
架空地線の種類
◆裸電線・単一より線
亜鉛メッキ鋼より線(GSW)
硬鋼線材のため錆が発生し、場所(塩害地域等)により10年~15年程度で張り替える場合が多いため、短期間の仮設設備には使用するが、長期的に使用する場所には極力使用しない。
鋼心アルミより線(AC)
遮蔽効果を期待するには、導電率の高い架空地線を用いる必要がある。AC線は、鋼心の周囲にアルミを圧着させ、導電率を高めている。一般に広く使用されている。
光ファイバー複合架空地線(OPGW)
大量の情報量を高品質で伝送できる光ファイバーを架空地線に内蔵した構造。光伝送を目的としたOPユニット部と、この外側に既存の架空地線と同等の性能をもたせるためのアルミ覆より線部の2つで構成されている。
標準径間長
154kV、66kvの標準径間長は、250m~350mと言われている。ただし、架線横断や山間地の谷横断などの長径間箇所は高張力電線の適用などを検討する。
直線的に描いた想定線と、実際にたるませて張った送電線との差を弛度という。電線は周囲温度の変化によって膨張・収集を起こす。また、電線をピンと張ったまま支えるには、ものすごく大きな力が電線と鉄塔に加わるため、送電線にはある程度の弛みが必要となる。
電線の弛度は、電線種類やサイズによって異なり、径間が長いほど弛度が大きくなるため鉄塔を高くする必要がある。
電線の配列
電線の配列方法は、代表的なものとして「水平配列・垂直配列・三角配列」の3通りある。
◇水平配列
1回線送電線によく用いられている。
・電線に雪氷が付着しやすく、弛みの増加。ストリートジャンプ( *1 参照)など電線の運動しやすい箇所
・長径間箇所
・特殊な地形で、電線が吹き上げられるおそれのある個所
以上の箇所に適し、水平に電線を配置しているため、支持物の高さを抑えることができる。しかし、垂直配列や三角配列に比べて線下補償面積が広くなる欠点がある。
*1 ストリートジャンプ:電線に氷雪が付着し、気温上昇や風などにより脱落すると、その電線がほぼ垂直に跳ね上がり、大きく動揺する現象で、相間短絡を招くことがある。
◇垂直配列
2回線や多回線送電線に多く用いられている。
1回線送電線にも適用され、線下補償の所要面積が非常に少なくてすむ 。
◇三角配列
1回線送電線にもよく用いられている。
また、水平配列に比べ線下補償の所要面積は少なくて済むが、支持物の高さは高くなる。
また、垂直配列に比べ、線下補償の所要面積は多くなるが、支持物の高さは抑えられる。
<用地交渉難航による電線の配置例>
電線の配置的には垂直配列となっているが、民地(住宅地)の用地交渉が難航したため、送電線を公共の道路通過とした。
1号線・2号線の垂直配列となっている。用地交渉が難航した場所を避け、右・左に位置を変えている。